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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(オ)299号 判決

西宮市甲子園口四丁目二二四番地

上告人

玄幡マツ

大阪市東区杉山町一番地

被上告人

大阪国税局長

右当事者間の差押物件解除請求事件について、大阪高等裁判所が昭和二九年二月二二日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨は、単なる訴訟法違反の主張であつて、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

(参考)

昭和二九年(オ)第二九九号

上告人 玄幡マツ

被上告人 大阪国税局長

上告人の上告理由

一、原審は本件物件につき上告人と訴外三興工業株式会社(以下訴外会社)との間になされた金銭消費貸借並に動産信託譲渡担保契約が真実に合致しないものであると認定しているがその理由として訴外会社は借用当時相当好況にあつたこと並に簿価金百四十余万円のものを金三十万円の担保に入れる筈がないこと及び訴外会社の帳簿上本件物件がその所有財産として記載されていたこと等に依り借用するにつき特別の事情があつたと認められないと判断しているが当時の訴外会社の事情として漸く会社経営状態が好転し設備拡張に拡張を重ねるべき必要があつたからその金高の如何を問わず捻出して工場拡張に使用するのが通常と考えらるべきことであり況して金三十万円をの金員を利用し度きは理の当然である又金員借用につきその四乃至五倍に相当する担保を供するは日常行われて怪しまないものであるそして更に訴外会社の帳簿に記載しているのは譲渡担保の性質を知らない経理担当者並に本件物件を現実に使用している訴外会社としては無理からぬことであるのみでなくこれは世間にあり勝ちなことである。

以上を通観すれば原審は経験法則違反をなしていることは明かである。

二、本件差押物件は昭和二十五年十月十九日上告人の為めに大阪地方裁判所執行吏村田安太郎が差押をなし同月三十一日同執行吏が一括競売して上告人が右物件を競落しその引渡しを受けたものである(甲第二号証執行力ある正本附記参照)。

従つて上告人が右競売に依り本件物件の所有権を即時取得したものである。

然るに原審はこの点に関する上告人の主張についての判断を全然していないのは判断遺脱の違反である。

以上

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